控訴審の判決が平成１７年１月２６日午後１時３０分より東京高等裁判所１０１号法廷で行われました。判決は、東京高裁が、殺害についての警察の責任を認めず、一審のさいたま地裁の判断を支持し、原告・被告双方の控訴を棄却する結果となりました。

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◆記者会見
　判決に続いて、霞が関の「司法記者クラブ」で、猪野憲一さん、京子さん、弁護団、「支援する会」の田島泰彦・上智大学教授が記者会見を行った。　まず、弁護団長の中山福二弁護士が、「捜査怠慢が死を招いたことをきちんと認めてもらうために控訴したのに、一審判決をそのまま容認した判決だ」と総括。「二審では、小松武史被告の刑事裁判判決などがやっと開示され、犯人グループがかなり早期から身体声明に危害を及ぼす計画をたてていたことが明らかになってきたのに、判決ではほとんど触れられていない」と批判した。判決は、事件について「ストーカー行為」という言葉を使ったが、「ストーカー行為だとしても必ずしも殺害まで疑う理由はなかったと述べて、予見に結びつけていない」。わずかに進展はあっても、一審と同じ結論にとどまった高裁判決への失望を語った。
　さらに松本弥生弁護士が、補足で判決を解説した。
　判決は、詩織さんを拉致・監禁するなどの身体加害計画があったことは大筋で認めている。また、名誉棄損事件については小松和人容疑者への接触が警察権の行使として適切だった、とも述べている。しかし、武史被告らにおいて、詩織さんへの身体危害を直接告知するような行為はなかったのだから、警察は殺害までは予見できない、と判断した。「判決は、殺害は武史被告がしたことだと見て、和人と武史を分けて考えているのではないか」　
　続いて、両親が、落ち着いた口調ながら、強い怒りを語った。　憲一さんは「極めて短い判決言い渡しで、これでお終いなのかと呆然とし、愕然とした。詩織の無念がまったく消えていない。はらわたが煮えくりかえる内容だ」と言った。「本当に、警察に『助けてくれ』と何回も行っても、助けなくてもいいと、認めてしまったような判決。こういう司法でいいのか、非常に残念。怒りが爆発するような気持ちでいる」
　京子さんは、「あきれて言葉も出ません。裁判官は本当に私たちのことを考えて、公正に判断してくれたのか。怒りではちきれそうです」。「あれだけ苦しい思いをして警察に駆け込んだのに、何もしなかったことが堂々と認められる判決はおかしい。だったら私たちはどこへ行ったらいいんですか」と強く訴えた。
　中山弁護士は、記者の質問に答えて、「上告するかどうかは両親とよく相談して決めるが、上告したい」と、最高裁まで闘う姿勢を見せた。

◆報告集会では
　午後２時半から、弁護士会館で、報告集会が開かれた。
　弁護団から「軽いものから次第にエスカレートしていくストーカー犯罪なのに、判決はそれをとらえていない。当時の上尾署員の一人は、エスカレートしていくことを心配していたと、自分たちの裁判で認めていた。今回の判決は、それさえ認めておらず、どうしても納得できない」と、再び説明。
　憲一さんは「　非常に怒っている。娘は納得しないだろう。高裁ならばもっと違う判断が出されると期待していたのに。もっと世の中を見てほしい。子どもの世代まで影響してくる。公平で公正な裁判を求めたい。最高裁でも当然闘うつもりだ。」と述べた。
　京子さんは「支えてくれた皆さんがいるから、私たちはつぶれずに闘って来られた。こんな結果になってしまったけれど、私たちにはまだ皆さんがいる。何と言っていいかわからないくらい、感謝している」と、支援してくれた人、傍聴に駆けつけてくれた人たちに感謝の言葉を述べた。「今、一番怒っているのは、娘。絶対に許すさないと思う。あの子の意志を、私たちは継いでいこうと思っている」
　支援者からは、「署名など市民の意見はどこにいったのか。マスコミには、判決だけでなく毎回記事を書いて欲しい。」、「遺族の方々は闘い続けると思います。しかし、他人の力こそ必要です。風化させずに応援して欲しい。」などの声があがった。
　田島教授は「多くの人の思いを逆なでするような判決。確定させて、警察の責任が問われないままになってはいけない」と、引き続き、一緒に取り組んでいこうと呼びかけた。

◆識者の批判
　この他にも、判決後の報道として、27日の朝日新聞・朝刊より、長谷川京子弁護士（ひょうご被害者支援センター理事）の談話や28日の読売新聞・夕刊より一面コラムの「よみうり寸評」に識者の判決に対する批判が掲載されています。長谷川弁護士は、判決はストーカー行為の本質を理解していないとし、これでは、同様の事件が繰り返されると指摘しています。また、よみうり寸評では、警察に対して批判をしています。

参考：*よみうり寸評　読売新聞ホームページ
　　　*朝日新聞のHPには掲載していないので、紙面をご覧ください。