◆控訴審が東京高裁で始まりました。
桶川ストーカー事件国賠訴訟の控訴審・第一回口頭弁論が、6月11日(水)午前11
時から東京高等裁判所で開かれました(秋山寿延裁判長、藤村敬裁判官、志田博文
裁判官)。
一般77、報道19、計96席の傍聴席が埋まるなか、まず原告代理人の中山福二弁
護士が第1〜第3の準備書面から要点を冒頭陳述。上尾署の捜査怠慢と詩織さんの殺
害の因果関係を否定した第一審判決を厳しく批判するとともに、「捜査怠慢、告訴調
書改ざんなどの違法行為と殺害との因果関係は明白」と主張しました。

続いて法廷に立った原告・猪野憲一さんは意見陳述で「一審判決の内容は、まったく
信じられない」「警察は、告訴状を出せばストーカーたちを捕まえると言ったではな
いですか」「警察に対し、言葉では言い表せない怒りが腹の底から沸き上がってきま
す」「法治国家であるこの国の司法の正義を信じ、誰もが納得できる公正な裁判を」
と、強く訴えました。

いっぽう被告である埼玉県側は、原告側の控訴に対して付帯控訴する意向を明らかに
しました。原告が国家賠償法に基づいて埼玉県に約1億1千万円の賠償を求めたこの
国倍訴訟。第一審判決で、さいたま地裁は「警察が名誉毀損事件での告訴を受けなが
ら捜査しなかった違法性を認め」「550万円の賠償を埼玉県に命じ」ていますが、
埼玉県側はそのことを不服として改めて戦う姿勢を見せたものです。

被害者・詩織さんの告訴を受けた埼玉県警上尾署は殺害事件を予測できた‥‥。原告
側がその予見可能性を強く主張、また立証することになる控訴審。次回の口頭弁論は、
8月25日(月)15:00からです。


◆閉廷後、司法記者クラブで記者会見が開かれました。

猪野憲一さんの話
「今朝、出てくる時に、娘が殺害された現場を通りました。大きな「ひまわり」の花
が二輪、供えられていました。それを見て、また新たな戦いが始まるという気持ちに
なりました。法の正義を信じて強い気持ちで戦っていきたいと思います」

猪野京子さんの話
「現場のお花はきょうだけでなく、娘の誕生日、命日、判決の日などの節目ごとに供
えられていて、そんな心ある人たちの見えない力に支えられてここまで来ました。きょ
うは娘のピアスと腕時計を身に付け“きょうからまたがんばろうね”という思いです。
藁をも掴む思いで行ったのに、警察は何もしてくれなかった。犯罪を未然に防ぐのが
警察の仕事。そのことを裁判で証明したい。娘と一緒に戦っていきます」


◆“支援する会”控訴審の報告集会が開催されました。

口頭弁論当日、弁護士会館会議室で開かれた“支援する会”の集会には、52名にの
ぼる支援者のみなさんが参加。弁護団からの報告、猪野憲一さん・京子さんの挨拶、
そして意見交換が行われました。支援者からは「次回はもっと傍聴に人が集まるよう
声をかけたい」「ストーカー事件が頻発する時代、警察がしっかり対応するべきだと
ここではっきり事例を出さないと、これからも苦しむ人がいっぱい出ると思う」など
の発言が出ました。
 

これに対して弁護団の中山福二弁護士は、次のように語りました。
「きょうの冒頭陳述でも強調しましたが、まさにこの事件はストーカー事件であるの
に、警察はもっと小さく名誉毀損に限定した問題として扱った。しかしそうではなく、
ストーカー事件というのは、生死に関わる事態にエスカレートしていくものだという
ことを裁判所に認識してもらいたい。捜査怠慢と殺害事件の因果関係を何としても認
めてもらいたい。また警察側は、捜査怠慢、そして公文書を偽造してまで怠慢を隠ぺ
いするという事実を自ら認めて謝罪したのに、裁判となると一転、詩織さんやご両親
を誹謗中傷するような主張を平気でしていて、対応がひどすぎる。
 また付帯控訴ということは、より一層、こちらの姿勢に対して争う姿勢を見せたと
いうことだと思いますが、私たちも、より一層、厳しい対応をしてこちらの主張が認
められるように訴訟を進めていきたい。 
 次回(8月25日15時から)の口頭弁論もきょうと同じ101号法廷ですが、そ
こは最高裁判所の法廷に次いで、日本で2番目に広い法廷。次回も大勢のみなさんが
声をかけ合い、傍聴いただければ有り難いと思います」